あらすじ


野心的な取扱説明書

実は本作の世界観は、ゲーム本編よりも前に説明書の中で語られています。あまり知られていませんが、ハイラル世界の創世は『神々のトライフォース』の説明書ですでに描かれており、『時のオカリナ』でデクの樹が語るよりも何年も前のことでした。後に追加された要素といえば、三女神それぞれに固有の名前が与えられたことくらいで、基本となる内容はすでにこの時点で揃っていました。つまり、説明書の冒頭数ページにはハイラルの伝説そのものが記されているのです。

この設定を書いたのは小泉歓晃(こいずみ よしあき)。エンディングロールでは「PRINTED ART WORK」の項目に名前が記されています。インターネット上でよく語られている話によれば(筆者自身はまだ確認できていませんが)、宮本茂は『ゼルダ3』に複雑な物語をあまり望んでおらず、初期2作のようにシンプルな内容にしたいと考えていたそうです。しかし小泉氏はより壮大な物語を志し、説明書の冒頭にある7ページの導入文を書き上げました。この文章はゲーム本編の開発にも影響を与えたとされ、実際に本作には比較的長い導入シーンがあり、数多くのNPCとの会話を通して物語の要素が少しずつ語られていきます。

説明書の表紙
ニンテンドーダイレクトでプレゼンテーションを行う小泉歓晃氏。『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』は、彼が任天堂で初めて関わった作品でもあります。そこから現在に至るまで、大きくキャリアを築いてきましたね!

取扱説明書の物語

以下の文章について
以下のテキストは、神トラの取扱説明書のあらすじ『ハイラルの歴史』をそのまま掲載したものです。このページのフランス語版と 英語版では、日本語版の文章を翻訳した上で解説も加えていますが、日本語ではその必要はないと考え、原文をそのまま掲載しています。 『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のあらすじであり、ゼルダシリーズ全体の設定の根幹にもあたる文章です。ぜひそのままの形で お楽しみください。

物語『ハイラルの歴史』

ゼルダの伝説の舞台、ハイラルの歴史を語るには、まずトライフォースの神話にふれなければなりません。ハイラルに残る三神崇拝の古い 神話です。かつて神に最も近い民族とされたハイラル人(ハイラルの語源でもあります)が、ハイラルの子孫に残した書物の中に三人の神々 「力の神」「知恵の神」「勇気の神」による天地創造の様子が書かれています。

神話

人が現れるはるか昔、混沌として何もないこの世界に神々は降り立ち、それぞれの力で世界に秩序と生命を造られました。「力の神」 は火で山々を赤く染め、大地を造られました。「知恵の神」は科学や魔法を造り、自然に秩序を与えられました。そして「勇気の神」 はその優しく、たくましい心から、血をはう者、空を行く者、あらゆる生き物を造られました。すべてを創造し終えられた神々は、 この世界を去られる時、自らの力を象徴する黄金の聖三角体『トライフォース』を残されて世界のすべてをおさめさせました。

トライフォースは、それぞれ「力を支配する者」「知恵を司る者」「勇気を鍛える者」の三つの紋章を持ち、その力を受け継ぐふさわしい者が 現れるまで、世界のどこかにある聖地で輝き続けているそうです。

これらの記録書を書き残したハイリア人民族は、神の声を聞くことができる選ばれた民でした。それゆえ、高い耳を持ち、感覚に優れ、 魔法を使いました。彼らの子孫は各地方に根づき、魔法と予言を伝えたといいます。

説明書に描かれている三女神。ここでは「MASTER FORCE」という表記が見られますが、これは直前の文章で説明されている トライフォースを指しているようです。同じものを指すのに、いろいろな呼び方があるものですね。

聖地

ここハイラルは、ハイリア人の遺跡が多く残る、神話にゆかりのあち地方です。そしてここにも、トライフォースにまつわる古い言い伝えか あります。

天下る何処かに黄金の力有り。
触れそめし者の望み神に届かん。

聖地で太陽のように輝くトライフォース。個人的には、『神々のトライフォース』のアートワークの中でも特に美しいものの一つだと 思います。

人々はその黄金の力を求め、我さきと聖地を捜しました。砂漠の遺跡の下、高山民族の墓の中、様々な情報が飛びかいましたが 発見されたためしがありませんでした。あこがれは欲望に変わり、情報のために血を流す事もよく起こりました。心安らかな人々は不穏な日を 送らなければいけませんでした。ところが、ある日、まったくの偶然からか、とある盗賊団によって、聖地の入口が開かれたのです。そこは、 この世界とは別の世界。たそがれの中に黄金色に輝くトライフォースがありました。一団は仲間を押しわけ、眼の色を変えてかけ寄ったと いいます。ちみどろの仲間割れの末、勝ち残ったのは一団の首領でした。鮮血に汚れた手で首領がトライフォースに触れると紋章の精霊が ささやきました。

汝、望むもの有らば、我もまた、それを望む。

時空を越え、はるか遠くのハイラルにも、こだまするほど首領は大声で笑い続けたそうです。

男の名はガノンドロフ、通り名を魔盗賊ガノン。ハイラルをおびやかした邪悪の王ガノンは、まさにあの時、誕生したのです。

封印戦争

トライフォースの力を得たガノンが、何を望んだかは分かりません。しかし、このハイラルの地にもガノンの邪気は押し寄せてきました。 欲深い者達は、この力に吸い寄せられて消えてゆきました。黒い雲がいつも空をおおい、不吉な出来事が次々とハイラルを襲いました。 ハイラル王は、ハイラルに住む七人の賢者達と騎士団を呼び、悪の原因を封印するよう命じました。

トライフォースは自らで善悪を判断しません。善悪を判断するのは神だけだからです。しかし、トライフォースを手にする者が善人だけとは 限りません。そこで、ハイラル人は神のお告げで、トライフォースをかどわかす魔を撃退する、退魔の剣を造りました。 それはマスターソードといわれ、真の勇者のみが使うことが出来るといわれていました。賢者達はまず、マスターソードとそれを扱う勇者の 存在を捜しました。しかし事態は急を要してガノンの邪気は王宮に迫ってきました。賢者達と騎士団は、持てる力を最大にして、悪しき者との 壮絶な戦いを繰り広げました。猛攻に身をていして盾となった騎士団は、残念ながら力尽き、命を落としてしまいましたが、賢者達の封印は 完了しました。ハイラルはトライフォースの力を悪用するガノンから、平和を守り勝利を喜びました。多くの犠牲をはらったこの戦いは、 「封印戦争」として後世に語り継がれています。

聖地の入口を封印する七賢者たち。

司祭

封印戦争から数世紀たちました。ハイラルは、知恵と信心深い民達の心で平安でした。封印の事も遠い伝説として語られるようになりました。 しかし、ある年ハイラルに原因不明の災いがよく起こるようになりました。疫病、かんばつ、魔法の力では、どうにもなりません。 ハイラル王は困り果て、封印を調査させましたが変わりはなく、民衆は神に祈る他ありませんでした。そこへ彗星のごとく現れた アグニムという男が、不思議な魔法で災いをしずめたのです。民衆達は彼を英雄とたたえ、王は七賢者の再来と、司祭として城へ招きました。 ハイラルに再び、平和が戻ったかに見えました。しかし、国をまかされたアグニムは王に代わってハイラルをおさめはじめ、その権力を 思うままに使うようになったのです。最近では王を退けて王位を我がものにするつもりだとか、夜な夜な怪しげな儀式をしているとか、悪い うわさが絶えません。ハイラルは、新たな緊張を迎えたのです。

…カッコイイ、ですね!

プロローグ

ある夜、あなたは女の子の声で目を覚まします。声は頭の中に話しかけてきました。

助けてください………私の名はゼルダ……お城の地下牢に捕われています。

ゼルダのテレパシーによって目を覚ますリンク。

夢なのか現実なのか、あなたは飛び起きます。すると、いつもは、もう寝ているはずのおじさんが出かける支度をしています。「朝までに帰る、 家から出るな。」そう言葉を残して大きな体を揺すり、おじさんは家を出ていきました。薄明りの中でおじさんの手に剣と盾が見えました。 何かいつもの夜と違います。声の主は、何を伝えようとしているのでしょうか。そして、おじさんは、どこへ、 何をしに行ったのでしょうか………。

こうして、雨が降る不吉な夜に、ゼルダの伝説はまさに始まろうとしています。